HMEPクリニカルクラークシップ 報告書
2020-21年度のクラークシップ修了者の体験談を掲載しています。
HMEPCCを終えて
藤田医科大学医学部5年 加藤杏珠
2020年4月からSMCにて半年間お世話になりました。私の語彙力ではなかなかHMEPCCの良さをすべて伝えることは難しいですが、簡単に感想を述べさせていただきます。
まずは各科についてですが、内科ではカルテの書き方、プレゼンの仕方、身体診察の仕方など基本的なことから教えていただきました。今まであやふやだった基本的事項が洗練され、医師として生きていくための礎ができたように感じます。
内科外来で患者さんを初診から継続して診させてもらう機会があり、とても良い経験でした。もう少し自分に余裕があれば、家庭医療科や救急科を回っているときにもお願いしたかったです。
家庭医療科では初診の患者さんの問診をたくさん取らせていただきました。初診の患者さんは皮膚科の患者さんが多かったですが、これほどたくさんの皮膚科の症例を診る機会は大学のポリクリではないので、良い経験でした。内科系疾患は再診の患者さんが多く、生活習慣病の管理について学びました。
救急科では、内科で学んだプレゼンや身体診察、家庭医療科で学んだ医療面接を活かして初療にあたることができました。たまたま内科、家庭医療科、救急科の順番に回りましたが、一番良い回り方だったのではないかと思います。PBLも初療で鑑別を考えるときに役に立ちました。
全体としては、朝や夕方のカンファレンスがとても勉強になりました。症例検討やレクチャーで知識を整理することができました。また、大学入学後鈍っていた英語のリスニング能力も鍛えられました。
大学でのポリクリを再開して、HMEPCCがいかに充実していたか、実感しております。大学では何かよくわからずただ回診についていく、ただカンファで座っているなど無駄な時間が多いですが、SMCでは研修医かのようにほとんど全てのことをやらせていただきました。また、空き時間と実習の時間のメリハリがはっきりしていたため、USMLEの勉強も進めることができました。
SMCCCは本当に素晴らしい学びの場で、参加できる学生さんは時間の許す限り参加すると良いと思います。私は半年でしたが、今考えると1年でも良かったなあと思います。
大変充実した、貴重な体験をさせていただき、HMEPの先生方には感謝しております。いつかこのプログラムに貢献できるような医師になれるよう、精進してまいります。
HMEP Clinical Clark ship in Shizuoka Medical Center
東海大学医学部5年 中村慶仁
今回、HMEPのクリニカルクラークシップとして、2か月間SMCの内科で臨床実習をさせていただき、僭越ながら実習内容と体験談を書かせていただきます。
内科実習
実習内容は、大きく二つに分けられ、一つは、入院の担当患者について、もう一つは救急外来に運ばれてくる内科的疾患の初療についてでした。
まず、担当患者についてhistoryとphysical examをとり、指導医・上級医にプレゼン、その後回診し、カルテに記載するという流れで、退院まで担当させていただきました。内科では、救急科から引き継ぐ入院患者が多く、急性期の疾患が多いため、毎日2~3人担当させていただき、その疾患の多くは、内科のcommonな疾患を中心に担当させていただきました。大学では、どうしても時間も人数も限られているため、多くの患者を退院まで診る機会はなく、またcommonな疾患を多く診る機会もないため貴重な経験となりました。
次に、救急外来の初療についてですが、日中は、指導医・上級医が救急科を兼任していることから、救急外来の内科的疾患の初療を扱わせていただき、その内、入院が必要な場合には、その後の入院管理についても継続して担当させていただきました。
入院患者、救急外来の初療通じて、最も重要であると感じたことは、Assessmentをする段階で、historyとphysical examについて診断を想起しながらしっかりとっていないと何を鑑別として挙げるかが不明確で、鑑別を挙げられたとしても何がrule inできて、何がrule outできないのかが判断できないため、いかにH&Pが重要であるかということを学び、また強く意識付けられました。
加えて、今回、指導医より英語でカルテを書く機会もいただき、書き方や表現等をご指導いただきました。カルテの表現には決まった型があることを知り、教えていただける機会に恵まれ大変勉強になりました。
PBLについて
週2回2時間、松下先生よりPBLをしていただきました。今回は2か月という短い期間であったためテーマを絞って行っていただき、内容としては、始めに課題のテーマについてPBLを行い、その後ロールプレイングで実践していく形式でした。PBLで知識のブラッシュアップを行い、そのことを活かしての実践でしたが、理解している知識でもいざ実践の場面ではなかなか想起できないこともあり、実践の必要性を再確認するとても良い機会となりました。
Primary care
今回、内科とは別途に、家庭医の伊藤先生が勤務している久道医院で、3日間外来実習をさせていただきました。久道医院は皮膚科と内科を取り扱っているので、皮膚疾患を抱える患者が多く、また来院人数も多いクリニックでした。SMCでは主に急性期の疾患を抱えた患者に対しどのようにアプローチしていくかということが多いことに比べ、久道医院では慢性的な疾患に対して患者のバックグラウンドなども考慮に入れたうえでどのように向き合いアプローチしていくかということが主眼となり、同じ内科であっても違いがあることを感じるとともに、ホスピタリストとプライマリーケアの役割の違いがそこにはあり、互いの相互関係があって地域の医療は成り立っていることを実感しました。
International conference
SMCでは、多数の国内外で活躍されている先生方によるinternational conferenceが開催され、参加させていただきました。中でも、Dr. Deshpande、Dr. Branchのカンファレンスはとても勉強になりました。Dr. Deshpandeはclinical reasoningにおいて、H&Pから何を想起し、コストベネフィットを含めてどのように診断を進めていくべきか簡潔に体系立てていることが印象的で、Dr. Branchは、Bedside teachingが興味深く、physicalから得られる情報が多くその重要性を改めて感じさせられました。
まとめ
今回2か月間という短い期間でしたが、大学とは異なり多くの患者に接する機会をいただき、退院まで担当させていただけたことは、とても貴重な経験でした。また先生方には親身にご指導いただき、充実した日々を送ることができました。出来ることならより長い期間実習し、より自己のスキルを高めたい気持ちで一杯です。私は、内科の実習をさせていただきましたが、診療の基礎を学ぶにはとても優れた場所で、しっかりとH&Pをとり、鑑別を挙げAssessmentを学びたいという方にとっては絶好の場所でお勧めです。
謝意
今回このような充実した実習をさせていただき、大変貴重な経験となりました。今後もこの経験を活かし、本プログラムに少しでも貢献できるような医師を目指し日々精進してまいります。
改めて、SMCで学ぶ機会をくださった町先生、ご指導いただいた井口先生、松下先生、伊藤先生、平尾先生、大屋先生をはじめ、HMEPの先生方、並びにJrSrの伊藤様、東海大学の林様に感謝申し上げます。
2ヶ月間のHMEP実習を終えて
高知医学部6年 横井和子
1. HMEPCC研修報告
2021年5月から2ヶ月間静岡医療センターでHMEPの内科実習に参加させて頂きました。この2ヶ月を一言で表現すると“とっても充実していた”ということに尽きます。HMEPの2ヶ月の実習は私にとって今後医師として生きていく上での最初の手ほどきをしてくれるものでした。英語の学習に例えるとアルファベットを大学の座学で学び、入門の文法をHMEP実習で知ったようなものでしょうか。医学生としての私は実習前と実習後ではまるで別人のように感じます。
内科では入院(あるいは救急での初診)から退院まで常時二人ほどを担当させて頂き、H&Pの大切さを学びました。鑑別を考えながらも丁寧にhistory takingをすること、どの所見を特に取りたいかを考えながらphysical examをすること、この二つでかなり鑑別が絞れることを担当させて頂いた患者さんから教えて頂きました。朝の内科カンファでの毎朝のプレゼンを繰り返すことでプレゼンのポイントを掴めるようになりましたし、その後の回診では私のphysical examで足りなかったところを教えて頂いたり様々な患者さんの身体所見を実際に見て・聴かせて頂きました。大屋先生が主催して下さっている救急カンファでは鑑別を挙げ問診・検査を考えることを繰り返すことで、大学の座学で学んだだけの時はあやふやであった医学知識が自分の中に定着してきていることを感じることができました。何よりも先生が臨場感を持ちながら教えて下さるので知識が入ってきやすかったのだと思います。
HMEP実習を開始して余裕が出てくると救急も見てみたくなり、日中に加え輪番日の当直帯(土日)もできるだけ入らせて頂きました。限られた時間の中で先生方が問診・診察・検査をし診断に至るプロセスを側で見たり問診をさせて頂くことで医学知識がどんどん生きたものなっていくのを感じられました。
また、HMEPの実習の魅力はカンファレンスやレクチャーの豊富さにもありました。内科カンファ・救急カンファに加え、北野先生のカンファや放射線カンファ、伊藤先生の家庭医療レクチャー、international conferenceまで学ぶ機会が豊富に用意されており、更にどのカンファレンスもオープンで質問を喜んで受け入れて下さる土壌がありました。担当させて頂いている患者さんの身体所見等で分からなかったことを質問もできましたし、international conferenceでは医療英語が分からなかったら日本語を混ぜて発言し、とても勉強になるとともに楽しい時間でしたDr. Alanの口頭諮問を受けさせて頂いたのもとても良い経験になりましたし自信にもつながりましたし、Dr. Branchのbedside teachingは身体所見の大切さと奥深さを知る機会となりました。
2.今後の実習生へのアドバイス 実習・学習面
実習の間は朝から晩まであらゆるところに学べること/学べきことが豊富に存在しているので、できるだけ積極的にその知識を自分から獲得しに行くことが成長への道なのではないでしょうか。以下に1日の流れを振り返って具体的に述べさせていただきます。
① 朝一で身体所見を取りに行く:朝の内科カンファレンス前に担当させて頂いている患者さんの身体所見を取りに行きますが、それぞれの患者さんのproblemを考えて取るべき身体所見を取りにいくことを意識しながら毎日毎日行うことで身体所見の型が身につきました。また、出来れば毎日同じ時間に顔を見にいくことが大事だとも感じました。
② 朝の内科カンファレンス:内科が担当している全ての患者さんのプレゼンがあります。その際には先生方のプレゼンの方法(イントロの言い方から始まりや伝えるべき情報の取捨選択や抗菌薬の選択等)を聞き、自分のプレゼンで足りないところを真似したり、初めて聞く医学知識が出てくればメモをして後で調べ、画像所見で異常が分からなければ後で自分で画像とレポートを付き合わせて答え合わせする等ですごく力がつくように思います。また、私のプレゼンで足りないところを先生方がfeedbackして下さるので積極的に教えて頂くようにすれば同じ間違いをしなくなるようになります。
③ カンファ後の回診:先生方の身体所見の取り方を見ながら私に足りなかったところを確かめたり、自分の担当以外の患者さんも毎日様子を見せて頂くことで色んな疾患と回復過程について学ぶ機会になると思います。
④ カルテの記載:毎日カルテを記載することで型が身につきました。また、記載したカルテを先生方に見ていただきfeedbackを頂く中で病態生理から鑑別や検査まで私に足りない部分を知りました。その後で自分で再び調べることで医学知識が広がり定着していくと思います。
⑤ 担当している患者さんについて:一人の患者さんには大抵複数のproblem listがあります。それら一つ一つを考え、かつ相互関係を考えることで医学知識が蓄積されていきました。また、薬や輸液についてはHMEP実習前はいまいちイメージがつきにくかったのですが、担当患者さんの入院中の薬(内服、点滴静注ともに)や輸液の投与量・投与速度もカルテでチェックすることで薬に対する苦手意識も払拭されていくのでお勧めです。
⑥ 救急カンファレンス:大屋先生が週2~3回朝に教えて下さいます。学生・初期研修医が見学・担当した救急の患者さんについてプレゼンし、参加者が鑑別・問診・検査等を考えていきます。最初は鑑別を考えることも難しいかもしれませんが1週間もすれば慣れると思います。新しい知識をたくさん教えていただけるのでメモ用紙はいつも携帯し、分からないところはその場で質問し知識を吸収するようにすればいいのではないでしょうか。何より自分でプレゼンすることで力がつくので積極的にされるのが良いかと思います。私は救急の本を一冊携帯し、カンファ中のメモを後でその本に全て書き込むようにしていました。
⑦ その他のカンファレンス:どのカンファレンスも本当に勉強になるので楽しみながら参加して積極的に質問したり、講義してほしいテーマがあれば先生方に伝えれば叶えてくださいます。international conferenceは 英語ということでやや怖気付く人もいるかと思いますがどの先生も優しく、発言しようとする人に対してとてもwelcomeに接して下さいますので英語がわからなければ日本語を混ぜてでも発言することをお勧めします。
⑧ 学生側の希望を最大限に叶えようとして下さる先生方が揃っていますのでHMEPの方で用意して下さっている実習以外にやってみたいことがあれば希望をぜひ相談されると良いと思います。
この2ヶ月を振り返ってひしひしと感じることは、HMEPの最大の魅力はHMEP実習を担当して下さっている「先生方」であるということです。どの先生方も臨床能力はもちろんのこと、熱意とアメリカを目指すという将来の展望があり、ご自身の知識や経験をどんどん学生へ教えていこうとして下さる方ばかりでした。疑問が次から次に浮き上がる私にいつも応えて下さり、質問をすると資料をすぐに渡して下さったり、ご好意で抗菌薬の使い方や画像・心エコーの読み方等をレクチャーをして頂いたこともありました。また、私が書いたカルテのfeedbackが欲しいとお願いすると時間を作って下さって指導して下さったり、身体所見で十分に理解できなかったところがあると一緒にベッドサイドまで行って教えて下さることも一度ではありませんでした。救急の場でも忙しい合間をぬって教えて下さったり、英語のカルテの書き方も知りたいというとすぐに教えて下さったり等々、先生方からして頂いたことは到底書ききれません。
医師として歩き始める前に一番最初に学んだ場所がSMCでのHMEP実習でよかったと心から思っています。先生方のpracticeを医師としての最初のstandardとして学べたことは、今後私が研修医として働き始める上で大きな糧になると感じています。また、この2ヶ月の実習で医学の考え方・動き方の基本を教えて下さったからこそ、私の医師としての今後の発展はどうすれば可能になるか、そのためにはどうすれば良いのかということもある程度分かるようになりました。最後になりましたがHMEP創設者の町先生、責任者の大屋先生、内科チーフの井口先生をはじめとする先生方、JrSrの伊藤様、高知大学の岡崎様、HMEP実習を可能にして下さった全ての関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。ゆくゆくはHMEPにご恩返しをさせていただけるよう、これからも精進して参ります。